300系電車

製造:1927・29・30

製造に至る経緯

東上鉄道の昭和初期における電化区間拡大期に多数製造した型式である。製造年次により大まかに3つの形態に分類する事が出来、所謂「1927年系」「1929年系」「1930年系」と称する車両群である。

新製時の概要

東上鉄道初の半鋼製車体を採用しており、製造年次・車種・用途により車体の仕様は異なるが、主要寸法は全長17,253mm・車体長16,650mm・車体幅2,654mmで全車統一している。幅の広い腰板と小さ目な側窓、やや深い屋根と一部露出した台枠といった鈍重な印象、そして数多打ち付けたリベットと屋根部分以外の直線的構成をも相俟り、優美さの欠片もなき外観ではあるものの、却って一部の好事家の面々からの人気を得る処となった。
走り装置は制御装置が間接自動制御(電空カム軸式:東芝・日立製。それぞれ国鉄制式CS1・CS2類似)、主電動機出力99kw(単位電圧675V・定格回転数635rpm・歯数比63/25=2.52:日立・東芝製。それぞれ国鉄制式MT‐7・MT‐9類似)である。

1927年系電車

川越市〜武州松山の電化に対応し製造したグループで、デハ2形(両運転台)とクハ2形(片運転台)の2車種が存在した。

1927年系電車・新製当時

池袋〜川越市電化時に製造した東上鉄道初の電車(デハ1形・クハ1形:15m級木造車体・3扉)を継承したスタイルであるが、運転区間の拡大を踏まえ、座席配置はセミクロスシート(向かい合わせ固定クロス&扉周囲ロング)で、各車両に便所を設置している。尚、デハのそれは後位寄乗務員室の助士席側(貫通路右側)を潰す形で存在し、独特な隻眼顔が特徴である。

1929年系電車

1929年系電車は武州松山〜山名の電化に対応し、従来蒸気機関車牽引であった旅客列車を全て置き換えるべく製造したグループで、デハ3形(両運転台)とデハニ1形(両運転台・二等荷物合造車)、デハユ1形(両運転台・二等郵便合造車)、クハ3形(片運転台)の4車種が存在した。

1929年系電車・新製当時

1927年系車両は3扉であったが当年系は座席数増加を図る為に2扉へ変更し、従来の客車に似たものとした。機器関係では冗長性向上を図る為、デハとデハニの集電装置を2個装備とした。

1930年系電車

1930年系電車は池袋〜成増の中間駅増設と同区間の増発に対応し製造したグループで、デハ4形の1車種が存在した。

1930年系電車・新製当時

短距離運用に対応する為に車内設備はオールロングシート・便所なしである。

退役・廃車

製造後、車両需給に合わせた諸改造により様々な形態のものが発生・存在し、個体毎に態様が異なる状況となっていた。所謂「上信急行の大改番」で300系に改称し、1960年代初頭迄の代表的車両として各路線(平坦線区)で活躍して来たが、老朽化により1965年に廃車を開始し、1973年に全廃した。