210系電車

製造:1950〜51

製造に至る経緯

1951年に竣工した高崎・伊香保軌道線の高速鉄道化に合わせ、当該路線で運用する普通列車と池袋〜伊香保直通の温泉急行列車に充当すべく設計・製造した車両である。

210系電車・登場時

新製時の概要

車種は両運転台のcMc(モハ210)のみであり、新渋川〜伊香保の急勾配・急曲線区間に存在する最大57‰の急勾配への対応上、付随車は製造していない。

車体・車内設備

車体構造は旧来のものを踏襲しており、全長16,250mm(車体長15,650mm・台車中心間10,600mm)で、車体幅は2,550mmである。側出入口は片側2箇所に幅1,100mmの片開き引戸を備えている。車内は車体幅が狭くクロスシートの採用を断念したが故に全席ロングシートではあるが、有料優等列車に供する為に奥行650mm(背摺含む)を取り、乗客にゆったり坐っていただくに値する座席を備えている。

走り装置・主要機器

制御装置は電空単位スイッチ式(三菱製HL。制御段数:直列6・並列5・弱界磁1・電制7)で、主電動機(三菱製。端子電圧675V・定格出力99kW・定格回転数760rpm)4個を制御する方式である。駆動方式は釣掛式(歯数比18/70=3.88)で、制動方式は自動空気式である。
台車は旧来の釣合梁式軸箱支持装置と重ね板ばね式枕ばねを用いた揺れ枕吊り方式で、軸間距離は2,300mmである。
補機類は電動発電機(直流出力式・3kW)と電動空気圧縮機(歯車式・760L/分)を、それぞれ用いている。

主な改造

使い勝手の向上と延命を図るべく、各部位に改造を施している。

210系電車・連接改造後

就役以来、複数両連結運転時にも貫通扉を使用しなかった(1951〜52年頃迄の上信急行では幌と渡り板の取付による貫通路の設置を行なっておらず、その後国鉄桜木町事故の発生を受け、大半の在籍車両に対し貫通路の整備を実施したものの、当型式は急曲線が連続する線区に充当しており、安全面への配慮上非常扉としての機能に留めていた)が、1957〜58年に貫通路の整備と保安度向上を図るべく一部少数を除き連接3車体編成に改造した。組成はMc1‐M2‐Mc1´(いずれもモハ210形)とし、同時に便所と一部床下機器をM2車へ移設した。
その後、1966年に優等列車運用からの撤退により便所の撤去(客室化)を、1967年に全先頭車両へのATS(自動列車停止装置)の取付を、1971年には車体各部位の修繕を、それぞれ実施した。

退役・廃車

新渋川〜伊香保の通称「伊香保線」全ての列車(直通有料急行・同無料急行・普通)に充当し続けた当型式であったが、直通有料急行の特急格上げと直通無料急行の系統分離・廃止に伴い1965年頃からは高崎地区の普通列車運用全般に進出(制御装置・方式の関係上、他型式との併結は出来ず)した。
その後も地道な活躍が続いたが老朽化により5080系を新製し、1979年に廃車を開始し1980年に全廃した。