5080系電車

製造:1979〜80

製造に至る経緯

東上線の末端区間なる新渋川〜伊香保、通称伊香保線は随所に50‰超の急勾配と半径100m未満の急曲線を有するが故に専用車両を充当しており、特急列車には10100系を、一般の列車には210系を運用していた。後者については一般庶民の生活水準が向上した1970年代になっても尚、旧態依然とした状態で運用に就いていた。
斯様な状況を改善すべく、伊香保線専用の一般型車両として当型式を設計・製造した。

新製時の概要

基本的な車体構造は5000系を踏襲しているが、210系・10100系と同様の連接台車・車体を採用している。
組成は1位寄からMc1(クモハ5180)-M2(モハ5280)-Mc3(クモハ5380)の3車体編成である。

車体・車内設備

車体長は先頭車が12750mm・中間車が9,750mm(3車体編成全長36,750mm・台車中心間10,250mm)で、車体幅は2800mmである。先頭車・中間車共に側面窓割と扉の配置が前後方向で非対称で、特に中間車はその度合が大きい。これは窓部品の点数を可能な限り抑制し、尚且つ冷房装置の搭載位置と車内天井部・側出入口付近天井部への横流送風機設置による制約の結果である。

5080系電車登場当時

車内設備についても5000系と同様、戸袋部分をロングシートとしたセミクロス配置であるが、便所の設置はない。車両間・中間部の貫通路は幅800mmで、扉は設置していない。

走り装置・主要機器

台車は軸箱支持装置に緩衝ゴムを用いた方式(軸ばね併用)を上信急行において初めて採用し、急曲線通過性能を高めている。それ以外の走り装置については3000系13000系・5000系と共通のものを装備しているが、走行性能を伊香保線に見合ったものとすべく、駆動装置の歯数比を変更(85/14=6.07)しており、相違がみられる。
制御装置はMc1車に、集電装置はMc1車とMc3車に、補機類はMc3車に電動発電機(70kVA)を、M2車に電動空気圧縮機(1,590L/分)を、それぞれ備えている。
冷房装置は車体構造の関係上、一般型ではあるが集中式ではなく特急型13000系と同一の集約分散式を採用し(Mc1・Mc3車:4台/両、M2車:3台/両取付)、側出入口付近天井部に横流送風機を備えている。

主な改造

経年劣化による各部位の傷みを修繕すべく1994〜95年と2009〜10年に特別修繕工事を実施し、最初の工事時に車体側面への行先・種別表示装置の取付と先頭車前面の同装置の電動化(側面取付のものと連動する)を併せて実施した。

5080系電車・近年

現況

本来の使用目的である伊香保線の普通列車全便、東上線・藤岡〜新渋川と上信線・山名〜下仁田の普通列車の一部運用に就いており、全車両が現役である。しかし新製から40年が経ち、特修工事等の各種改造を受け若返りを図っているものの、寄る年波に抗う事が出来なくなりつつある。尚、具体的な世代交代の計画は出ておらず、当面は現状が続くものと思われる。