15000系電車

製造:1984〜86

製造に至る経緯

伊香保直通系統の特急列車は1962年の運転開始以来、10100系を使用し続けて来た。しかし当該型式は新渋川〜伊香保の50‰を越える急勾配(最急57‰)に対応する為に高速性能を犠牲にしており、平坦線区では他の型式を用いる特急列車と同様のダイヤグラムを組んでの運転が出来ず、1970年代末以降問題化していた。
斯様な状況を可能な限り緩和し、尚且つ全線に亘り運用可能な特急型車両として設計・製造した車両が当型式である。

15000系電車

新製時の概要

基本的な車体構造は13000系を踏襲しつつ、10100系と同様の連接台車・車体を採用しており、主要寸法も後者と合わせている。
組成は1位寄からMc1(クモハ15100)-M2(モハ15200)-M3(モハ15300)-M4(モハ15400)-M3´(モハ15500)-M2´(モハ15600)-Mc1´(クモハ15700)の7車体編成である。

15000系電車中間車

車体・車内設備

先頭車前頭部は営業政策面の要望により10000系・10100系の系譜を継承しつつ、設計・製造当時の流行を採り入れた鋭角な造形とした。
側窓は長手方向が13000系と同じく1,550mmであるが、上方へ50o拡げ800mmとし、眺望性の向上を図っている。側出入口は各車片側1箇所(Mc1-M2-M3車は1位寄、M4車は中央やや1位寄、M3´-M2´-Mc1´は2位寄)に、幅700mmの2枚折戸を備えており、窓間(折目部分の間柱)を黒く塗る事で1枚窓に見えるような外観としている。
車内設備は座席が13000系同様980mm間隔の配置であるが、回転作業の省力化を図るべく自動一斉回転機能を組み込んでおり、座席を含めた室内各部の意匠・配色に変容が見られる。尚、供食設備として喫茶カウンターが簡便ながらも復活しており、M4車の1位寄・半室に設置している。便洗面所はM2車とM2´車に大便所(和式)と小便所、洗面所を各1箇所備えている(循環式汚物処理装置付)。

走り装置・主要機器

走り装置は5080系と共通のものを装備しているが、走行性能については冒頭に述べた使用条件(平坦線区における最高速度110q/h運転と50‰を超える急勾配線区の双方)に対応すべく、駆動装置の歯数比を変更(84/17=4.94)している。
制御装置はMc1車とMc1´車に、集電装置をM2・M3・M3´・M2´車に、電動発電機(70kVA)をM3車とM3´車に、電動空気圧縮機(1,590L/分)をM2車とM2´車に、それぞれ備えている。
冷房装置は集約分散式(4,500kcal/時)を屋根上に1両あたり3〜4台取り付け、天井部に風道を通して冷風が均等に行き渡る方式としている。尚、換気装置として全熱交換器を各車屋根上に1台取り付けている。

主な改造

旅客サービスの向上と経年劣化への対応、使い勝手の向上を図るべく、各部位に改造を施している。
特別修繕工事とバリアフリー対応を2002〜04年に、集電装置と補助電源装置の取替(前者:菱形→シングルアーム、後者:MG→SIV)と行先・種別・愛称名表示装置のフルカラーLED化を2010〜12年に、それぞれ実施した。
尚、特修工事の施工により内装が変容しており、接客面における流行の変化が見られる。

現況

伊香保系統専用車としてのみならず他系統への運用にも相応に多く就いており、後発型式登場後も尚、上信急行の特急列車における象徴的要素を長年に亘り担い続けている。新製から30年以上が経ち、新型車両との世代交代が取り沙汰されてもおかしくない状況ではあるものの、廃車は発生しておらず全車両が現役である。