16000系電車

製造:1992〜95

製造に至る経緯

上信急行の特急列車は特殊構造の車両を用いる池袋〜伊香保系統と、それ以外の車両を用いる中距離(池袋〜高崎・渋川・富岡・下仁田・中込)系統と、長距離の池袋〜長野方面系統に大別出来、各々に適した車両を充当していた。
1990年頃の状況を顧みるに、それらのうち伊香保系統へは1984〜86年に15000系が就役し10100系を淘汰しており、中・長距離系統は主力車両の13000系と、伊香保系統と兼用の15000系が占めつつ、長距離系統は古豪10000系が未だ現役であった。いずれも新製後15〜20年を目処に特別修繕工事を施し、特に内装に関しては陳腐化を防いで来たが、改めて各方面から新型車両の登場を求める動きが少なからず起こっていた。
斯様な状況を鑑み、新製から30年前後を経て老朽化が進行していた10000系を淘汰すると共に、将来の運転最高速度向上(110km/h→120・130km/h)と当時建設中であったJR長野新幹線(軽井沢以遠は新在直通方式)と延伸が進みつつあった上信越自動車道への対抗を意識し、尚且つ時代の要請に見合った要素をも包括し設計・製造した型式である。

新製時の概要

車種・組成は1位寄から、3両固定編成がMc1(クモハ16100)-M2(モハ16200)-Tc(クハ16300)で、5両固定編成がMc1(クモハ16100)-M2(モハ16200)-M1(モハ16400)-M2´(モハ16500)-Tc(クハ16300)である。Mc1・M1車に制御装置を、3両固定のMc1・M2車と5両固定のMc1・M1車に集電装置を、M2・M2´車に補機類を装備している。

車体・車内設備

基本的な車体寸法は長さ20000mm・幅2900mmと、13000系を踏襲しているが、車内空間拡大の為に軌条面〜構体上面(冷房装置設置面)迄の高さを約3,700mmとした(従来の特急型車両は約3,550mm)。
側窓は外嵌め式で、硝子を間柱へ重ねて継目にシール材を入れる構造の連続窓とし、太目の窓枠と併せ特徴のある外観を形成している。開口部の上下寸法は約800mmで従来車より約50〜100mm拡大しており、開放感も向上している。
側出入口は各車両片側1箇所に有効幅850mm(Tc車は片側2箇所で、うち1位寄は車椅子対応の為1,000mm)のスライド式プラグ扉を採用し、従来の2枚折戸と較べ密閉性・静粛性の向上を図っている。
それらの要素を実現し尚且つ軽量化を図るべく上信急行初のアルミ製構体を採用しており、尚且つ塗装を「特急列車を示す赤色の帯を残しつつ地色を明るくし、コーポレートカラーなる緑青色を側窓と前面窓の周囲に配したもの」に一新した。

16000系電車

設計思想の基礎なる13000系同様、汎用性を重視すべく一般客室のみのモノクラス構成としている。
座席は可動式の中肘掛と背面収納テーブルを備えた回転リクライニングシートを横2-2列・1,000mm間隔で設置し、背摺は可動範囲内で任意の角度に調節可能である。尚、折返時等の車内整備簡略化を図る為、電動式の一斉回転機構を装備している。
便洗面所はM2・M2´・Tc車の各車端部に大便所・小便所・手洗所を1箇所ずつ備えており、大便所はM2・M2´車が和式、Tc車は車椅子対応の洋式で、いずれも真空式汚物処理装置付である。
出入台と客室の仕切扉は13000系以来の自動引戸を採用しているが、13000系・15000系のマットスイッチ方式を踏襲せず、新たに光電センサ方式を採用して足元の段差を解消した(開閉装置は電気式を採用)。
案内表示装置は先頭車前面窓内側(列車愛称名)と側面幕板部(種別・愛称名・行先)に幕式のものを、車内客室端の通路鴨居部分(停車駅等の各種情報)に三色LEDのものを、それぞれ設置している。Tc車の1位寄出入台付近には車販準備室とカード式公衆電話機を設置している。

走り装置・主要機器

制御装置・主電動機・集電装置は、登場当時における最新の一般(通勤)型車両・9000系50番台とほぼ共通のものを採用している。制動装置は勾配線区に対応すべく抑速制動を付加しており、Mc1・M1車の床下に当該制動用の抵抗器を設置している。

16000系電車

集電装置の配置については前述の通りだが、5両固定編成はそれを半減しつつ母線引き通しを実施しており、高速走行に寄与している。
駆動系は高速走行に対応すべく歯数比を変更(93/20=4.65)している等、相違がみられる。
台車は9000系で初採用して以降の標準であるボルスタレス構造を踏襲しているが、高速域における偏揺れ・蛇行動抑制の為ヨーダンパを設置する他、15000系同様急曲線通過性能を高めるべく、軸箱支持装置に緩衝ゴムを用いた方式(軸ばね併用)を採用している。
補機類はM2車とM2´車に110kVAの静止型インバータと2,180L/分の電動空気圧縮機を備えている。
冷房・換気装置は前者が集約分散式(15000kcal/時)を、後者は全熱交換器をそれぞれ1両に2台、屋根上に設置している。

現況

伊香保系統を除く中・長距離系統の一角を担っており、13000系とほぼ同様の運用方法で活躍しているが、制動方式が異なる為、互いの混結は不可能である。
2011〜13年に特別修繕工事を実施(Tc車に設置の公衆電話機を撤去)し、全車両が現役である。