9000系電車

製造:1987・91〜95
東上線と営団地下鉄有楽町線の相互乗入用車両として設計・製造した型式である。

製造に至る経緯

上信急行における地下鉄との相互直通運転は、大宮線と都営6号三田線にて既に実施していた。新たな相互直通相手となる営団地下鉄では千代田線開業以降に新設した路線に充当する車両を、省エネルギーを強く意識した走行性能を備えるものとしており、相互直通用車両2型式のうち抵抗制御・発電制動常用の2050系では勿論の事、7000系についても回生制動常用ではあるものの界磁チョッパ制御なるが故に、排熱発生による隧道内の温度上昇が問題になってしまうであろうと想定した。それを受け、新たな設計思想の元に設計し直す事と相成ったのである。
尚、設計過程において7000系6両編成1本にて、AFEチョッパとAVFチョッパの2方式による制御装置の長期実用試験を実施し、比較検討を進めた。

新製時の概要

車種・組成は1位寄からTc1(クハ9100)-M1(モハ9200)-M2(モハ9300)-T1(サハ9400)-M1(モハ9500)-M2(モハ9600)-T2(サハ9700)-M1(モハ9800)-M2(モハ9900)-Tc2(クハ9000)で、10両固定のみの組成である。M1車に制御装置と集電装置を、M2車に補機類を装備している。

車体・車内設備

上信急行で初めて軽量構造オールステンレス製車体を採用し、台車構造(後述する)と併せて従来の一般(通勤)型車両と較べ1両あたり約5t程度の軽量化を図っている。側窓は5000系以来の一段下降式を踏襲している。
前頭部はは先頭車両が併結等で編成中間に入る運用方法(従来の前面貫通扉付車両においても通勤型では幌を用いた常時貫通は行なわなかったが、非常時と車両管理所での車内貫通点検時に必要であった)を想定しない点を鑑み、非常用の貫通口を片側へ寄せて運転台の空間を広く確保した。その結果、6000系0番台にて初採用したガラス面を大きく取る意匠を採り入れつつも平板な印象にならぬよう二面折妻形状を採用し、尚且つ窓周り・前照灯・後尾灯を一段凹ませる手法をも採り入れ、従来の一般型車両に広く採用していた三面折妻の印象を残しつつ、新味且つ精悍な印象を生み出している。

9000系電車

車内設備で目新しい点として、座席端への袖仕切設置(従来はステンレスパイプにて構成)と座席表地への着座区分を示す柄の表示を挙げる事が出来る。車両間・中間部の貫通路は冷暖房効率と静粛性の強化を図る為、全箇所に自動閉扉機構付の片開き扉を備えている(幅800mm)。常時使用する貫通路全箇所への扉設置は、一般(通勤)型では初である。
方向幕等の表示装置は6000系0番台のものをほぼ踏襲したが、先頭車前頭部に設置の運用番号表示器は磁気反転式のものを初めて採用した。

走り装置・主要機器

制御装置は地下鉄線内での排熱抑制と省エネルギーの深度化を含めた使用条件を考慮し、AFE(自動界磁励磁)式主回路チョッパ装置で主電動機8個を制御する方式を採用した。これも上信急行で初である。界磁チョッパ制御では不可能であった低速〜中速域の無段階制御と、回生制動有効速度域の拡大(約5km/h程度迄。従来は20q/h台前半迄)を実現した。尚、この制御装置は起動〜高速域を全て半導体で制御するが故に初期費用は高く付くものの、長期的には構造のシンプルさ故に故障に強く、安定した走行性能と高き省エネ性を発揮出来るものとして採用に踏み切った。
主電動機は前述の主回路チョッパ制御採用により7000系で実績のある複巻電動機を採用し、制御方式の変更により粘着性能が向上し編成内の電動車比を下げる事が出来た点をも加味した結果、定格出力を150kW(端子電圧375V・回転数1,490rpm)とした。駆動方式は実績のある中空軸平行カルダン(歯数比87/16=5.44)である。
台車は軽量化と保守性向上を図るべく、上信急行で初めて枕ばねがボルスタレス構造のものを採用した。軸箱支持方式は6000系で初採用したSUミンデン式、牽引装置は1本リンク式である。
制動方式は7000系以来の全電気指令式(HRD)である。
補機類は電源装置が静止インバータ(140kVA)、電動空気圧縮機が低騒音型(2,180L/分)で、共に初採用である。車両搭載の各機器・装置の動作状況を表示し乗務員に知らせると共に、故障発生箇所を記憶し車両管理所等で試験機に接続の上読み込み、その調査に流用可能な所謂「モニタ装置」を設置した。これも上信急行初採用である。
集電装置は、それ自体は従来とほぼ同一のものであるが編成内で母線を引き通し、搭載台数を抑制している。

50番台

1992年以降製造の3〜6次車は同時期新製の新型特急用車16000系と共通の走り装置を採用し、番台区分により9000系50番台を名乗っている。
1・2次車新製時以降、約5年の間に進歩した技術を採用している。
相違点は下掲の通り。

9000系50番台

現況

東京地下鉄副都心線への乗入対応工事の一環として、保安装置の増設・更新と行先・種別表示幕、運用番号表示器のフルカラーLED化を2006〜08年に実施した。
尚、特別修繕を1〜4次車は前述の副都心線乗入対応工事と同時に、5・6次車は2009・10年に施工した。その他、更なる乗客向け設備の改良を施しつつ、全車両が現存し地下鉄有楽町・副都心線・東急東横線方面との相互直通運用を中心に、東上線内の運用にも入り活躍を続けている。