20000系電車

製造:2004〜2016

製造に至る経緯


20000系0番台

上信急行の一般(通勤)型車両は1970年代後半新製の新3000系7000系以来、東上線その他と大宮線で配置車両をある程度分ける方針を取り、以降9000系8000系にも踏襲していた。しかし近年になり車両設計・製造・運用・保守点検の更なる効率化を図るべく、従来の方針を転換する事とした。
斯様な状況と従来以上の省エネルギー、保守の省力化、製造工程の効率化、バリアフリー対応の深度化等の要望、設計途上の2003年に制定された「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」をも鑑みつつ、3000系の置換えと当時建設が進んでいた東京地下鉄副都心線との相互直通運転予定による所要車両数の増加への対応に留まらず、新たな標準型車両なる位置付けで「人と環境にやさしく、シンプル」を基本概念として設計・製造した型式である。

新製時の概要

番台区分(後述する)と編成両数により車番の付与方法が異なるが、制御車(Tc1・Tc2:クハ)、電動車(M1・M2・M3:モハ)、付随車(T1・T2・T3:サハ)の8車種を組み合わせた10両固定と8両固定の各固定編成が存在する。M1・M3車に制御装置と集電装置を、M2車に補機類を装備している。

車体・車内設備

一般(通勤)型としては初のアルミ製車体である。
前述のガイドラインに沿い日立製作所が開発・具現化した「次世代アルミ車両システム(A-train)」を採用し、従来の軽量ステンレス車より更に軽量化・構造の単純化と車内の静粛性向上を図った。

20000系電車中間車

片側両開き4扉・ロングシート・バケットシート・横流送風機併用の冷房方式は従来通りである。車内の色づかいは従来の暖色系から全体的に淡い灰色・光沢を抑えた銀色基調としたが、座席表地に黄橙色を用いつつ座面と背摺で濃淡のアクセントを付けたものとし、従来の印象を残している。床面は黒に近い灰色を基調に通路部(長手方向)をやや淡い色として座席足下部との識別を明示しつつ、側扉手前部分を黄色として各々の区画に視覚的な明度差を出し、吊手の長さ(後述する)共々バリアフリーを意識している。
車両間・中間部の貫通路は全箇所に自動閉扉機構付の全面強化ガラス製片開き扉を備え(幅900mm)、妻窓を省略する代わりに扉両脇に幅200mm・縦長のガラス部分を設け、車両間の見通し良化を図っている。尚、全面強化ガラス製にした事による乗客の衝突防止策として、沿線にまつわる物・事象を模した柄模様のステッカーを貼付している。
側扉間の座席に設置した仕切り手摺・側扉車内側上部の案内表示装置・片持ち式座席等の、8000系4〜6次車で初採用のものを踏襲している。それらを進化する形で当型式では側扉間に2本(着席人数区分2-3-2)と、新たに車端部座席にも1本(仝・連結面側から着席人数1-2)増設し、優先座席部分では間仕切・袖仕切部双方の手摺を滑り止め目的に凸凹加工を施し、黄色に着色している。それと共に当該部分の吊手を他部分よりも掴み位置を低くしている。

走り装置・主要機器

制御装置は主回路素子にIGBTを用いた2レベルVVVFインバータ方式で、2M車は1C4M2群、単M車は1C4Mの構成としている。従来の同装置と較べ、大幅な小型化を実現した。
主電動機は190kwの誘導電動機を、駆動方式は9000系50番台以来採用の中実軸TDカルダンを用いている。前者の定格回転数を1,825rpmに、後者の歯数比を97/16=6.06に設定し、8000系と較べ同一速度時の低騒音化を図った。
制動方式は回生常用・遅れ込め制御付の電気指令式(デジタル指令・アナログ変換HRDA-1R)で、電気停止制動を併用している。
台車はモノリンク式軸箱支持装置・Zリンク式牽引装置を組み合わせ、空気ばねを用いたボルスタレス方式である。
補機類は電源装置(SIV)が容量250kVA、電動空気圧縮機(CP)は8000系4〜6次車と同一のスクリュー式・容量1,666L/分で、8両固定編成は電源装置の容量を210kVAに減格している。
尚、側扉の駆動方式を電動式(リニアモータ駆動)へと改め、空気配管の省略を図った。
組成車両情報管理・制御伝送装置は、伝送速度3.2Mb/sのものを装備している。

番台区分


20000系50番台

用途により番台区分が存在する。

新製年次による変化

標準型車両として新製を続けてゆく途上で設計変更が生じており、各所・部位に変化が見られる。

新製年次による変化一覧
車外表示装置 車内表示装置 前面形状 備考
1・2次車 3色LED 3色LED 非貫通 0番台のみ
3次車 同上 同上 非常扉付 0・70番台
4次車 フルカラーLED 同上 同上 0・50番台
5〜8次車 同上 15インチLCD
横縦比4:3
同上 全番台
9〜13次車 同上 17インチLCD
横縦比16:9
同上 0・50番台

5次車以降は電動空気圧縮機を除湿装置内蔵型(容量は不変)に変更した。尚、車内の手摺・吊手棒・荷棚等の表面仕上げをヘアライン加工とし、指紋・皮脂による汚れが目立たぬよう配慮している。

20000系電車中間車・10次車以降

更に10次車以降は下掲の改良・変更点が存在する。

現況

1970〜80年代の3000系、1980〜90年代の6000系の系譜を継承する新世代の標準車として13年に亘り増備を進め、特に東上線・池袋口において長年主力であった3000系をほぼ全て淘汰した。
0番台は東上線へ配置し6000系と共に主力として池袋〜小川町を中心に充当しており、新高崎へ顔を出す運用も存在する。50番台も東上線へ配置し池袋〜小川町の運用に就くが、9000系と共に東京地下鉄有楽町・副都心線・東急東横線方面との相互直通運用に就く機会が圧倒的に多い。70番台は大宮線に配置し8000系と共に都営三田線・東急目黒線方面との相互直通運用に就いている。