上信急行電鉄の車両型式付与基準について

1940年の上信急行電鉄発足以降、合併・統合各社の制定により付与していた車両型式・称号・番号を変える事なく用いていたが、戦後間もなくの混乱期を越え、取扱の煩雑さと統一感のなさを問題視する傾向が現れた。
特に東上鉄道由来の車両に於いては、形態を示す記号の区分こそ有れども同一番号の車両が複数存在し、形式と付番の相関性が皆無(例:デハ1形を5番迄新製後、デハ2形を6番から新製等)であり、用途改造により生じた欠番を別個の改造を実施した他の車両が欠番を埋める等で複雑怪奇なものとなり、混迷を極めていた。
斯様な状況を解消すべく新たな車両型式付与基準を1950年に制定し、当時の在籍車両全てへの改番を実施した。所謂「上信急行の大改番」として、現在の車両型式に至る流れを作った大きな出来事である。

1950年制定の付与基準

電動車には3桁、制御車には4桁、付随車には2桁の番号を用い、型式は電動車のトップナンバーで表す。

1950年付番例

よって上掲の付番例では、クハ1803は800系の制御普通客車・クハ1800形であり、モハニ371は300系の電動荷物合造普通客車・モハニ370形である事が分かる。尚、付随車については用途と製造順序を2桁で表している。

この付与基準では形態・制御装置・用途による分類を用いており、主電動機出力による分類はなかったものの、便宜上100kWを目安に大:百の位を偶数に、小:同位を奇数にする大雑把な分類が一部存在した。しかし、いずれの分類も例外が多数存在していたが為に、徹底は出来ずじまいであった。尚、用途記号で「ロ」を特等車とし「イ」を不使用としている理由は、当時の国有鉄道における「イ」が一等車を示すもので、当該等級の車両がごく限られた主要幹線にのみ運用されている事に配慮した結果によるものである。

1961年改正の付与基準

1950年の大改番実施で従前の複雑怪奇を極めた混迷な状態は解消したものの、あくまでも当時在籍の車両群を対象としているに過ぎず、その後の新製車両群の登場には適応出来なくなった。その為、特急用10000系と一般用2000系以降の各型式には新たな付与基準を用いた。

先ずは上信急行初の特急用車両10000系新製に併せ、新たに5桁の車両番号を制定・付与した。4桁を越し突然5桁の番号を付与したのは、一般用車両に4桁:2000〜9999を充てる為であった。

1961年付番例

形態記号は従来のものを踏襲したが、電動車と制御電動車を区別すべく、新たに制御電動車の記号として「クモ」を、前述の10000系新製に併せて用途記号に食堂車の「シ」を、それぞれ追加した。

よって上掲の付番例では、クモハ10021は10000系の制御電動普通客車・クモハ10000形であり、クロシ10017は同じく10000系の制御食堂合造特等客車・クロシ10000形である事が分かる。しかし、この付与基準では落成順序を示す数字が1桁のみであり、製造数の少ない特急用車両には対応出来たが、やがて来る一般用車両の大量増備には対応出来ないが故に10000系と10100系への適用にとどまった。

次いで1963年の一般型車両2000系新製に併せ、4桁の車両番号を制定・付与した。尚、これ以降に新製した特急用車両もほぼ同じ基準を用いた(5桁は踏襲)。

1963年付番例

よって上掲の付番例では、クモハ13104は13000系の制御電動普通客車・クモハ13100形であり、クハ3416は3000系の制御普通客車・クハ3400形である事が分かる。

2004年追加制定の付与基準

1961年改正の付与基準の下、新たに発生した型式の車両に広く適用した四桁の番号が一杯になり、尚且つ同型式内に複数の固定編成両数が存在する場合にその分類が不可能な事象も発生した。この付与基準は従来以上に分類を深度化し、20000系新製に併せて今後発生するであろう新たな型式にも適用すべく制定した。

2004年付番例

よって上掲の付番例では、モハ28702は20000系8両固定編成内の伊香保方から7両目(7号車)に位置する電動普通客車・モハ28700形であり、クハ20005は同じく20000系10両固定編成内の伊香保方から10両目(10号車)に位置する制御普通客車・クハ20000形である事が分かる。

おわりに

以上、上信急行電鉄の車両型式付与基準について延々と述べて来たが、ごく少数存在する機関車と貨車については一連の付与基準を適用しておらず、とりあえず本稿では詳述しないので悪しからず。今後の情勢次第では新たな付与基準が発生するかも知れず、その辺りの興味も尽きない。